みなさんこんにちは!今回は内部統制のお話です。内部統制は会計士にとっては馴染みのある領域ですが、経理マンが日頃の経理処理を行う際にも、会社全体の「守り」の観点を身につける上でも、例えばIPO準備企業で統制整備をやる機会が訪れる際にも、最低限の下地の知識は身につけておきたいですよね。
下記でもお話していますが、この領域はブラックボックス化しており、監査法人や内部監査でないとなかなか体系的な理解をする機会がないと思います。ぜひこの記事で、さくっと基礎理念を勉強しましょう!
なお、今回の記事をもう少しわかりやすい目線でざっくり解説しています。こちらも事前にご覧ください!
前提となる基準
これから記載する文章は、以下の基準からエッセンスを抽出して書いています。
いわゆる「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」とよばれるものです。最終的にはこの内容がわかるようになることが○ですが、いきなり読んでも?だと思うので、先に本記事を確認ください。
内部統制の定義
まずは定義から。別紙1 P2には以下の定義が記載されています。
内部統制とは、基本的に、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動 に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な 保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されるプロセスをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング (監視活動)及びIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成される。
なんのこっちゃ、と思うかもしれませんが、ここで抑えておきたいのは、
・4つの目的のうち、「財務報告の信頼性」が特に大事。なぜなら、企業活動は最終的に全て数値に反映されるが、その信頼性が担保されているか?が重要。
・内部統制=経営目標を達成するためのプロセスである。
・6つの基本的要素がある。
という点です。特に皆さんが?と感じたのが経営目標を達成するためのプロセスである、という箇所だと思いますので、もう少し解説します。
企業は規模こそ様々ありますが、経済合理的かつ適切な意思決定・行動を行うために「経営者が勝手に決めないで、色々な人が相互に監視し合いながら皆で決めてね」という鉄則があります。ここを担保してくれるのが内部統制であり、もっと簡単に言えば「職務分掌」と「承認」です。つまり、
職務分掌:業務担当を分け、ミスを防ぐようにみんなでチェックする仕組み
承認:適切な人がチェックしOKを出す、企業としての意思決定を正式に行う仕組み
が根本概念であり、当たり前ですが業務の質を担保する上で重要なのです。
全体像の整理
定義と目的、基本的要素を理解した上で、本文です。ここで問題になってくるのが、専門用語が初めてだとわかりづらい!結局何を指すの?という点です。そこで、全体象の言葉を整理してみました。

是非この図を見ながら・頭に入れながら本文を読んでみてください。少しだけわかりやすくなるはずです。簡単に個々の用語の概念を説明していきます。
全社統制:評価対象の土台・根本となる概念です。経営者が誠実たる組織風土づくりをしているか?リスクを役会などで検知できる仕組みづくりができているか等。
重要な事業拠点:どこまで評価範囲とするか。質的重要性・量的重要性の観点から、その企業で評価しなければいけない拠点(=会社単位、事業単位、セグメント単位など)はどこか。
業務プロセス・業務処理統制:通常、会社は営業(フロント)→業務(ミドル)→経理(バック)という順番で機能が別れ、最終的に会計数値が作成されます。その中で財務報告に重要な影響を及ぼす業務プロセスは何か。各部署で上がってきたデータを生成する上で、ここは間違えるとヤバイ!となるプロセスはどこか?統制活動(職務分掌や承認プロセス)は適切に整備・運用されているか?
決算財務報告プロセス:開示作成の上で正確性・網羅性が担保される統制活動があるか。ここは経理の方はイメージしやすいですよね。
IT統制:各プロセスにITが組み込まれているのは昨今だと当たり前のお話になりました。正しくIT処理されているか?の環境チェックと個々の処理の妥当性を見に行きます。
では、これらの検討をどうやっていくの?というのが次のお話です。一言でいえば、内部統制の評価の一連の流れも「PDCA」で回していってくださいね、ということになります。

PLAN:評価の範囲、スケジュールなどを決定する。特に、海外展開している、事業所や店舗が多い、業務プロセスが複雑などは要考慮事項となる。
DO:整備・運用評価を行う。全社統制、業務処理統制、決算財務報告プロセス、ITに関連する統制など。
CHECK:評価の過程で発見された財務報告に係る内部統制の不備を取りまとめ。また、記録保存の上、経営者報告も取りまとめる。
ACTION:改善活動に向けた諸施策の立案、具体的な改善活動を別途まわしていく。翌期のPLANに盛り込む。
なお、監査人側が行う評価も、企業環境の理解を前提とした上で、経営者評価(会社評価)を基本的にトレースしていくものとなります。(サンプルの取り扱いなど特有論点はありますが)
終わりに
いかがでしたでしょうか。文章は難しいですが、言っていることは極めて単純明快、というのが少しでも理解してもらえれば幸いです。
とは言っても、具体的な業務イメージが湧きづらいのが次の問題です。正直、少しでも実務で触れることがあればすぐに知識と実践を結びつけられると思います!その一助となるような記事も、需要があれば書いてみたいと考えています。
読んでいただき、ありがとうございました。